今年は従業員の年齢構成が若い企業が運営する健康保険組合を中心に
解散が増えることはある程度、想定されていた。「財政調製」の名のも
とに、65ー74歳の前期高齢者の医療費を押し付ける仕組みが取り入
れられたためだ。
4月に制度化された高齢者医療制度は、75歳以上の人が払う保険料
の「年金天引き」ばかりが注目され、現役世代の負担が大きく増えたこ
とは陰に隠れがちだった。それが今回の健保解散で表面化したわけだ。
健保組合や公務員共済組合が75歳以上に拠出する負担金の割合は当
面、給付費の40%に上限を定めた。これは前進だ。だが前期高齢者の
医療費を誰がどう賄うのかは丼勘定といっていい。高齢者の加入比率が
格段に高い市区町村の国民健康保険と分担することにしたため、健保・
共済グループには保険料率の引き上げを余儀なくされたところが続出し
た。
社会保険庁が運営する政府管掌健康保険より高い料率になれば企業単
位で組合を維持する理由はなくなる。西濃運輸グループの決断は合理的
だ。
健保制度は民間が自主性に基づいて運営するのが原則。従業員のため
に独自の病気予防事業をしたり、腕の立つ医師の多い病院と個別に受診
契約を結んだりするなど、企業経営に近い感覚が求められている。その
自主性を生かす条件は、従業員と経営者が折半する保険料負担と、その
見返りとしての医療給付との関係が対になっていることだ。
にもかかわらず、高齢者医療費とし召し上げられる拠出金負担には、
健保組合の経営努力がおよびにくい問題がある。病気やケガをするリスク
が高くなる高齢層の医療費は公費負担を高め、そのぶん現役世代の拠出
金を減らすような制度改革も検討課題になろう。
【引用:日経新聞】