2008年09月02日

サブプライムローンなどの証券化商品、悪玉論に反論

サブプライムローンなどの証券化商品、悪玉論に反論


シカゴ・マーカンタイル取引所グループ名誉会長
レオ・メラメド氏
1932年、ポーランド生まれのユダヤ人
数学教師の家に生まれた。8歳の時にナチスに追われ、
駐リトアニアの杉原千畝(ちうね)領事代理が発行した
「命のビザ」で家族と日本に逃れ、さらに41年に米国
に渡った。CME会長だった72年、フレードマン教授
との会話にヒントを得て、世界初の通貨先物市場を創設。
その後、国債先物、株価先物などを開発し、世界の金融
市場拡大に貢献した。現在、通貨市場の制度作りを中国
政府に助言している。

証券化商品、悪玉説に反論
 信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライプローン)
問題に端を発した信用危機が長引き、商品市況の高騰と
合わさって、世界経済が混乱している。信用収縮は実体
経済に波及し、米景気後退の可能性も出てきた。グロー
バル化が進む市場の危機にどう対応するか。通貨先物市
場を世界で初めて設立し、「先物取引の父」として知ら
れる米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グルー
プのレオ・メラメド名誉会長に聞いた。

ーサブプライム問題では証券化商品が不動産バブルを加
速したともいわれている。デリバティブ(金融派生商品)
が世界経済の混乱を引き起こした張本人ではないか

「デリバティブ悪役論には反対だ。友人でシカゴ学派の
ミルトン・フリードマン教授が生きていたら同様に答える
はずだ。デリバティブはもはや市場経済の根幹だ。売買を
増やして流動性を高め、価格形成の透明性を高くする機能
がある。株式や債権など現物の取引だけでは売買が限られ
る。ノーベル経済学賞受賞のマートン・ミラー教授も既に
1980年代に『先物は重要な金融イノベーションだった』
と語ったほどだ」
「デリバティブ取引には損失ヘッジ、価格形成機能など様々
なメリットがある。通貨先物が存在しなかったら、為替相場
は今以上に厳しく上下に振れるだろうし、(日本企業をはじ
めとする)企業は貿易決済が難しくなる。デリバティブを
『大量破壊兵器』と表現した著名投資家のウォーレン・バフ
ェット氏ですら、デリバティブがなければ投資はできない」

ーならばサブプライムローンの本質とは何か。

「(証券化商品など)一連の信用創造の過程で情報開示がな
っていなかった点が問題だった。過剰投資した銀行、融資債権
の中身を開示しないで証券化した業者の罪だ。例えば、サブ
プライムローン関連証券を扱った資産運用会社ストラクチャー
ド・インベストメント・ビークル(SIV)は一種の『バーチ
ャル銀行』のはずなのに、銀行が連結対象に入れず全く情報開
示がされていなかった」
「(資本市場の審査部門ともいえる)格付け会社にも問題があ
った。格付けの条件となる経済データは日々変わって行くのに、
更新が不徹底だった。月一回など頻度を決めて、格付け理由な
どの具体的な内容を格付け会社は開示すべきだ。格付け審査も
商業部門から独立すべきだ」

ー金融商品そのものには罪がないということか

「そうだ。『欲』に目がくらみ、金融商品の価格形成の透明性
確保を怠った業者が悪い。証券化商品などは証券会社間の相対
取引で、市場参加者が参考にできる指数取引もない。(企業の
破綻リスクを売買する)クレジット・デリバティブの指数開発
はグリーンスパン前米連邦準備理事会(FRB)議長も強い関
心を持っていた」

ー当局の問題点は。

「証券会社の相対取引をもっと監督し、取引している商品の中
身を開示することが必要だった。ただ、証券取引委員会(SE
C)と商品先物取引委員会(CFTC)を統合して市場規制を
強めるという、ポールソン米財長官の大規制当局構想には反対
だ。証券大手ベアー・スターンズをFRBが救済した時など、
金融システム全体にかかわるようなリスクを止める場合などに
政府の役割は限定すべきだ」

ーエネルギーなど商品相場では先物市場への投機が問題となっ
ている

「ジョージ・ソロス氏が90年代初めに英ポンドに売りを仕掛
けた時のように、ヘッジファンドなどの活躍には理由がある。
多くが政府の過剰規制による『価格のゆがみ』だ。今回の原油
価格の高騰も石油輸出国機構(OPEC)という供給規制の非
合理性を突いた結果だ。原油採掘の量は本来、需要動向を反映
させていかなければならないものだ」
「もちろん、意図的に価格をつり上げている例が歴史上ないわ
けではない。80年代初めの銀相場では、米国の大富豪の買い
進みが材料となってバブルが生まれた。こうした相場操縦があ
った可能性がある場合には、価格操作がなかったかどうか、
政府は調べなかればならない」

ー食料価格も高騰しているが。

「背後には通常は穀物など商品を取引しない年金基金など機関
投資家がいる。こうした投資家は商品価格と連動する穀物スワ
ップと呼ばれる一種のデリバティブを証券会社から買う一方で、
証券会社はヘッジ目的で商品先物を買う。これが最近の商品先
物高騰につながった」
「今後、米国最大の試練はインフレ対策だ。FRBは年末にか
けて、金利を上げないといけなくなるのではないか。米ドルに
対する信用が落ちているが、信用危機とは別で、経常赤字、過
剰投資など構造的な問題だ。

ー市場経済のグローバル化で政府系ファンド(SWF)が活動
を広げ、米政府などは神経をとがらせている。

「米政府が主導した自由貿易と自由な資本移動が世界中の富の
形成につながった。政府系ファンドなど新たなマネーが出現する
のはよいことだ。ただ、これがOPECの生産コントロールの
正当化など政治的思惑に使われるなら問題だ」

ーグローバル市場経済の最大の功績は。

「ベルリンの壁が崩壊したのをはじめ、共産主義や独裁主義など
イデオロギーによって抑圧されていた人々を解放したことだ。
20世紀の大半の期間ではイデオロギーのために大勢の人々が貧
困にあえいでいた。ロシア、中国では市場経済が雇用を生み、人
々が最低限の生活水準を確保できるようになった」
「市場経済は政策にも自由を与える。(ブレトンウッズ体制の創
設から)変動相場制に移行したニクソン・ショックの時代まで通
貨は固定相場制だった。今の人民元相場と似た形だが、通貨の価
格調整メカニズムが働かないと金融政策が通用しなくなる。現在
の中国を見ると、中央銀行は金融政策によってインフレ圧力を吸
収できていない」

ー国際金融における日本パッシング(素通り)が恒常化しているが。

「政府による過剰規制が嫌気されている。政府が金融行政をもっと
自由化しなければ日本は国際金融界における地位回復は難しいので
はないか」


【引用:日経新聞】
posted by マイケル・J・ウリ坊(ウチヌノ) at 08:48 | 宮崎 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | コラム
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証券化はすばらしい
Excerpt:  証券化とはどういうことか? 証券化にはどういうメリットがあるか――という記事の
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Tracked: 2008-09-19 10:56