◆ポイント
(1)成果主義制度は降格処分が賃金の減額に直結する
(2)業務上の必要性と賃金減額という労働者の不利益
で判断
成果主義賃金制度では、年齢や勤続年数にかかわらず、職務の内容や成果
を評価して賃金を決める。多くの企業が導入している職能資格賃金制度と同
じく能力主義の1つだ。ただ職能資格制度は地位(職務)を解任されても
職能資格が変わらなければ賃金は同じなのに対し、成果主義制度では職務が
変われば賃金額は新たに与えられた職務が基準となり、大幅に変わる。
職能資格制度で職能資格が変わらない降格ならば、会社にとっての業務上
の必要性と比較し、労働者の不利益が大きいことはまずない。しかし成果主
義制度では「降格で職務が変われば必然的に賃金は減少する。賃金変更に伴
う労働者の不利益が業務上必要する降格理由を上回るかが大きな争点となる」
参考になるのは、外資系で成果主義制度を導入している自動車部品会社勤
務の男性が営業担当の取締役待遇になった半年後に部長に降格させられた
ケースだ。
会社側は「経営会議のテレビ会議化や代理出席の容認をしつこく提案したほか、
社長が求めたリポートを経営会議に報告しなかった」などとして妥当性を主張した。
しかし東京地裁は2004年、「提案は会議の機能を損なうものではなく、リポー
トも作成が困難な内容だった。」と認定、「男性の半年間の営業成績は堅調で、
問題点はない」として降格を人事権の濫用と判断した。
男性は営業部長への降格を含めて約2年半で4回降格され、入力業務担当の一般
社員になった。控訴審で東京高裁は05年、「最初の降格を前提として処分が積み
重なった結果で、いずれの降格も無効」として、最初の処分前の給与との差額の
合計約1,500万円と慰謝料100万円の支払を命じた。
「成果主義での降格は、重大なミスを繰り返したり、設定した業績目標に達しな
いなどの明確な理由が必要。会社側は降格の必要性を慎重に判断しなければならない」