はじめに、労働法にはどのようなものがあって、どのような
役割を担っているのか、みていきましょう。
労働法といっても、そういう名前の法律があるわけではあり
ません。労働基準法や労働組合法をはじめ、最低賃金法、労働
安全衛生法、労働者災害補償保険法、雇用保険法、男女雇用機
会均等法、労働者派遣法、育児・介護休業法など、労働問題に
関する法律をひとまとめにして労働法と呼んでいます。
これらの法律は、すべて日本国憲法の基本理念を実現するた
めに定められたものです。
【日本国憲法(抜粋)】
第 14 条 「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性
別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社
会的関係において、差別されない。」
第 19 条 「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」
第 22 条 「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職
業選択の自由を有する。」
第 25 条 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権
利を有する。」
第 27 条 「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。賃金、
就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律
でこれを定める。」
第 28 条 「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動を
する権利は、これを保障する。」
◆労働基準法
労働者が「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことがで
きるように、労使が守るべき最低限の基準を示したものが労働
基準法です。労働基準法では、労使は、労働基準法で示した労
働条件の基準を単に守るだけではなく、これを改善向上するよ
うに努めなければならないと示しています。
さらに労働基準法では、本来、労働条件とは、労使がお互い
に対等の立場で決定すべきものであることを示しており、労使
間で取り決めた労働協約や労働契約等は、これを誠実に遵守す
るよう義務付けています。
◆労働契約法
労働契約法は、労働契約の成立から終了まで、労働契約が円
滑に継続するための基本ルールを定め、個別の労使関係の安定
を図ることを目的としています。
◆最低賃金法
最低賃金法では、労働者の生活の糧となる賃金の最低額を保
障することによって、労働条件の改善向上を図り、これによっ
て労働者の生活の安定を図ることを目的としています。
◆労働安全衛生法
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保
するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的と
しています。事業主は、単にこの法律で定める労働災害防止の
ための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労
働条件の改善を通じて、職場における労働者の安全と健康を確
保するように示しています。
◆職業安定法
職業安定法は、公共職業安定所及び職業紹介事業者等に対し
て、「職業選択の自由」の尊重や「差別的取扱の禁止」などの
職業紹介等の基本ルールを定め、職業の安定を図ることを目的
としています。
◆労働者災害補償保険法
労働者災害補償保険法は、労働者が業務上の事由や通勤が原
因で怪我をしたり、病気になったとき、あるいはこれらが原因
で働けなかったために賃金を得られなかったときなどに備えて、
使用者が保険料を支払っておき、国から当該労働者(又はその
遺族)に対して必要な給付等を行うことによって、労働者の福
祉の増進に役立てることを目的としています。
◆雇用保険法
雇用保険法は、労働者が、働く意思と働く能力があっても、
何らかの理由によって職に就くことができないときに、再就職
するまでのあいだの生活を安定させ、就職活動を円滑に行うこ
とができるよう支援することを目的としています。
雇用保険給付には、求職者給付(いわゆる失業手当)だけで
はなく、就業中であっても受給することができる教育訓練給付
などもあります。
◆労働組合法
労働組合法は、労働者が団結して労働組合をつくり、団結の
力を背景に、使用者と対等の立場に立って、労働条件をより良
いものとするための活動を保護することを目的としています。
労働組合の活動には、労働条件をより良くするために使用者
側と話し合う団体交渉や、その話し合いを有利に進めるために、
団結の力を示すストライキなどがあります。