金融危機から実体経済の悪化、毎日の報道されるの
はリストラ、倒産の話題ばかり。
政治の世界に目を転じれば、相変わらず迷走劇を繰り返すばかり
頼るべきリーダーがついぞ見当たらない
いったいこの危機のとき、どんなリーダシップ、リーダー
が必要なんだろう?
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の最高執行責任者
に迎えられた柴田励司(46)は経営危機だった会社を1年で再
建した実績を持つ。
コンサルティング会社からCG(コンピューターグラフィックス)
会社社長に転じた彼は直属の部下全員と毎日5分以上話すルール
を自らに課した。
「困っている事は」「新しい事を始めてみないか」。提案を吸い
上げ、実現へチームを作る。「信頼は共有した時間の絶対量で決
まる」と言い切る。
CCC入後もグループ会社役員や中間管理職と議論の場を広げ、納
得ゆくまで考えをぶつける。音楽・映像ソフトのレンタル・販売
に次ぐ事業をどう育てるか。社員のまとめ役を託された彼は組織
を変える”異論”を掘り起こす。
消費不振の中、今年度の売上が10年前の7倍の20億円強に膨
らむシャツ専門店、メーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)。
創業会長の貞末良雄(68)はヴァンジャケットなど破綻への道
をたどった複数の会社を渡り歩いた。成長が鈍ったとたん、目標
を失い迷走する組織。軌道修正を求める彼の異論は顧みられなか
った。
彼は「同じ思いはさせたくない」と話す。企画から店頭に並ぶま
で1ヶ月弱、新作が毎週入荷する高速回転が同社の強み。「それ
、面白いね」。若手に企画をどんどん任せ、商品構成の変化を恐
れない。
負債や余剰設備・人員の削減など目標が明確だった時代にはトッ
プダウン型がマッチした。だが、世界経済の急減速で不透明さが
増す時代、変化の流れを読み誤ればたちまち沈む。
大恐慌が襲い、日本企業がこぞって解雇や減産に走った1930
年代初め。パナソニック(旧松下電器産業)創業者の松下幸之助
はラジオ事業進出に巨額投資し成長の礎を築いた。「衆知を集め
た全員経営」。創業者のこの言葉を大切にする社長の大坪文雄
(63)は大恐慌以来の危機とされる今年、動いた。充電池の世
界首位獲得へ三洋電機買収を決めた。
M&A(合併・買収)、新規事業への進出、人材育成。上場企業が
抱える60兆円もの手元資金が戦略の選択肢を広げる。複眼で先
を読む組織をつくれば、変革期を「攻め」の好機に変えられる。
危機にリーダーが求められるのは経営層だけではない。東京都葛飾
区の高層マンション工事現場。同じ制服に身を包んだ作業員約20
人は共同企業体(JV)として集まった大成建設と東海興業の混成
チームだ。
「ここは東海のやり方でいこう」。部位ごとの検討会議で、企業規模
がはるかに小さい東海のコスト削減技術が採り入れられた。大成出身
の作業所長、鈴木朋久(45)は自分から結論を出さない。両者それ
ぞれのノウハウを引き出そうと耳を傾け、決まったら即座に実行に移
す。「JV全体の力をフルに発揮しないと未曾有の資材高を乗り切れな
い」。工事は予定より前倒しで進み始めた。
単一文化を避ける
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